皆さまが家づくりを進めようとしたときに、1つの指標と考えるのが坪単価ではないでしょうか。
住宅情報誌などを見てみると、住宅会社ごとの平均坪単価が載っていることが多いです。「どちらの住宅会社の方が坪単価が安いか」といった視点で比較したことがある方もいるのではないでしょうか? 私も展示場で接客をさせていただいていたときに、来店したお客様から「お宅の家は坪単価いくら?」とよく聞かれました。
しかし、坪単価の見方をちゃんと知っておかないと、大きな落とし穴があります。坪単価を正しく理解しないで、家づくりを進めると失敗する可能性も。今回は坪単価について詳しく解説をしていきます。正しく坪単価を理解しましょう。
坪単価とは
坪単価とは、建築にかかる1坪あたりの平均費用のことをいいます。
例えば、坪単価100万円のメーカーがあるとすれば、30坪の家を建築すると、
100万円/坪 × 30坪 =3,000万円
で家が建てられるということになります。
なぜ、このような「坪単価」という指標がよく話題になるのかというと、家づくりを検討しようという最初の段階で、なんとなく価格を把握し比較したうえで、建築会社の選定をしたいと皆さんが考えるからだと思います。
1坪の大きさ
そもそも1坪とはどういった大きさなのでしょうか。
1坪は写真にあるような、たたみ2畳(帖)分のスペースのことをいいます。
1坪を㎡に換算すると、1.82m×1.82 m=3.31㎡となります
不動産公正取引協議会では、「㎡数」で表わすことを基本としていますので、以下の方法で坪数を出せるようにしておくとよいでしょう。
●㎡数を坪に換算する方法(豆知識)
㎡数に0.3025を掛け算すると求められます。
100㎡ × 0.3025= 30.25坪
延床面積と施工床面積
冒頭で、坪単価について、
『坪単価とは、建築にかかる1坪あたりの平均費用のこと』
と説明しました。
では、家の面積はどのように計算されるかご存じでしょうか?
よく聞く言葉に「延床面積」というものがあります。皆さまも聞いたことがあるのではないでしょうか。延床というくらいですから、その建物「床」の面積を数えたものなのです。
しかし、家に吹き抜けをつくった場合、「床」の面積として算入するのでしょうか?バルコニーはどうでしょう?小屋裏収納(天井と屋根の間にある空間を活用したスペース)はどうでしょうか?
実は、延床面積にはバルコニーや吹き抜け、玄関ポーチなどの面積は含まれません。
※奥行き2メートルを超えると算入されるなど細かな規則がありますがここでは割愛。
小屋裏収納も「床から天井までの高さが1.4m未満」「広さは下階の2分の1以下」 であれば延床面積に含まれません。
一方で、そういった施工を伴う空間全体を含めたものを「施工床面積」といいます。
当然 「延床面積」<「施工床面積」ということになります。
さて、皆さまが見ている「坪単価」はどちらで計算されたものでしょうか?
延床面積は、確認申請などで容積率などを計算する際に、建築基準法で定められたルールに則って算出されます。
しかしながら、「坪単価」は何かしらの申請などに使われるようなオフィシャルな数字ではありません。したがって、法律で定められた坪単価の算出ルールはありません。
では、そのことによって何が起こるでしょうか?
建築費 2,500万円、延床面積100㎡(30.25坪)、施工床面積120㎡(36.30坪)
の建物の坪単価は次のとおりとなります。
- 延床面積で計算した場合:2,500万円/30.25坪=82.6万円
- 施工床面積で計算した場合:2,500万円/36.30坪=68.8万円
このように延床面積で算出するのか、施工床面積で算出するのかで、大きく坪単価が変わってしまうのです。さまざまな場面で坪単価を見たときは、どちらで算出された金額なのかを必ず確認するようにしましょう。
坪単価比較時の注意点
坪単価を比較する際の注意点はほかにもたくさんあります。
順番に解説していきます。
建築費には何が含まれていて何が含まれていないのか?
今度は割る方の面積の話ではなく、割られる方の建築費の話です。
2,500万円の建物があった場合に、この金額に含まれているものは何?ということを考えてみる必要があります。
・構造躯体 ・屋根 ・外壁 ・内装 ・照明器具 ・給湯設備 ・トイレ
・キッチン ・お風呂 ・電気錠 ・床暖房 ・エアコン ・電動シャッター
・太陽光発電システム ・蓄電池 ・外構費用 ・家具 ・カーテン
当然 構造躯体や屋根、外壁、内装などは「つける/つけない」という選択の余地がありません。
しかし、太陽光発電で蓄電池などはつけない人もいるでしょう。
カーテンや照明器具はつけない人はいないでしょうが、ハウスメーカーに頼まずに別途施主様がご自身で手配されるケースもあります。
給湯設備やキッチンなどはどうでしょう、ガスorオール電化 によって設備にかかる費用は変わります。
このような、どこの住宅会社に任せるかによって流動性がある要素の金額を盛り込んで計算するかどうかによって 、割られる方の数字である建築費は大きく変わってきます。
当然、坪単価も大きく変動します。
設備のグレードの違いは?
当然、上記設備もグレードによって金額に違いが出てきます。
- セラミックトップのグレードが高いキッチンをつけたい
- 屋根材や外壁材はメンテナンスがかかりにくいよい屋根材をつけたい
- 給湯機は水圧を高くしたいので、高圧給湯タイプを選びたい
- 玄関のカギはリモコンタイプにしたい
- 窓のシャッターは電動タイプにしたい
- トイレはタンクレストイレにしたい
これらも建築費を大きく左右する要因の1つです。
何を選ぶのかによって坪単価も大きく変動します。
家の形状による違いは?
建物を真上から見た図ですが、仮に2つの家が同じ延床面積だった場合、建築費はどうでしょうか?
当然、入隅や出隅が多く、表面積が大きくなるⒷの家の方が建築費は高くなります。
複雑な形状ゆえに、地震が起こった場合の負荷が強くかかる部分と弱い部分が生じることで、補強コストもかかります。
余談ですが、一般的に設備にかかる費用が大きいため、延床面積が増えれば逆に坪単価は安くなっていきます。
住宅会社が展開する商品タイプによる違い
住宅会社は各社さまざまな商品を展開しています。
当然、商品によって、採用している材質や工法、採用できるメニューなどが変わってくることで、価格差が生じます。
セキスイハイムは、鉄骨系の商品と木質系の商品があり当然価格差があります。
さらに、鉄骨系の商品でも、3階建ての「デシオ」、2階建ての「パルフェ」、太陽光発電に特化した「スマートパワーステーション」では、価格が異なります。
結局、坪単価はどう考えればよいのか?
今まで解説してきたとおり、坪単価はあくまでも目安として考えるべきです。
さまざまな比較サイトやYoutubeを見ても、それぞれで発表されている数字は大きく違います。
当然、計算するための前提条件が異なるため、同じメーカーでも発表者がどのような条件で計算したのかによって坪単価が変わってきます。したがって、ご自身で調べてみたうえで、「大体50万から100万くらいでできるのかなぁ」ぐらいの感覚で比較するのがよいと思います。
なかには、坪単価の安さを前面に出してPRしている住宅会社もあります。
そういった会社は、計算にあたっての前提条件を厳密に統一しているのかもしれませんが、多くの会社はそうではないのが実情です。
したがって、住宅会社間を比較する際は、掲載されている坪単価のみで比較して選定するはお勧めしません。少なくとも、計算にあたっての前提条件が統一されているかどうかを確認し、違う場合は相違点を加味して比較するようにしましょう。
坪単価が安ければよいのか?
住宅は大きな買い物ですので、少しでもお得に買いたいという気持ちは(私も含め)誰もが抱く感情です。
一般的には安いには安いなりの理由があるはずです。材料費、建築費のどこで差がついていて、それが建物にどのように影響を及ぼす可能性があるのかを検討する必要があります。
大事なことは、「イニシャルコスト」だけ比較検討しないこと!
家は建てて終わりではありません。建てた後にかかる費用も考慮して家を建てることが大切です。
同じ坪数の家を、異なる住宅会社で建てた2つの事例で考えてみましょう。
●Aさん
坪単価が50万円の家を30坪で建築=1,500万円
60年間のメンテナンス費用や光熱費=1,500万円
———————————————-
60年でかかった総コスト=3,000万円
●Bさん
坪単価が80万円の家を30坪で建築=2,400万円
60年間のメンテナンス費用や光熱費=500万円
———————————————-
60年でかかった総コスト= 2,900万円
トータルの金額は100万円ほどで大きな差はありませんが、日々の快適な暮らしをできることを考えると、あなたはどちらの家がよいと思いますか?
住まいにかかる生涯コストについては、別の記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
気になる!セキスイハイム東海の坪単価は?
2022年度のセキスイハイム東海で住宅を購入いただいた方の延床面積の平均は121㎡(=36.6坪)、平均の建築費が2,646万円でした。
坪単価にすると
2,646万円/36.6=72.2万円
という結果でした。
最後まで読んでいただいた皆さまはもうお気づきかと思いますが、これもあくまでも目安の数字でしかありません。
平均としては上記のとおりですが、セキスイハイムで建ててくださった各ご家庭が 、設備をどう選択していくか、家の形状や商品タイプをどうするかによって、金額は大きく変わってきます。
これ以上の金額で建てられた方もいれば、もっと少ない金額で建てられている方もいます。 また、60年という長い年月で見たときに、本当にこの坪単価が高いものなのか、価値があるものなのか?そのあたりを考えたうえで、ハウスメーカーの選択をおこなっていただければと思います。
「なんだか高そうだからやめておこう」という先入観やネットの間違った情報に左右されず、皆さまの家づくりが少しでも視野が広くなり、ご自身の取捨選択がしやすくなることを願っております。