住宅設備の中でも、建築時にしっかり考えるべきひとつの設備に外壁があります。
どのような色や質感を選ぶのかで外観デザインの印象も大きく変わりますし、どのような材料や塗料を用いるかによって、生涯にわたるメンテナンスコストも大きく変わります。
今回はセキスイハイムの外壁の種類や性能などについてお伝えします。(今回は鉄骨系商品のみに焦点を当ててご紹介します)
一般住宅の外壁とセキスイハイムの外壁の違い
日本の住宅の「外壁工法」の変遷
現在では住宅の外壁にはさまざまな種類がありますが、もともと日本では「土壁」が主流だったようです。現代でも湿式工法(材料:モルタル・漆喰)と呼ばれ、静岡県でも松崎町にある「なまこ壁」と呼ばれる漆喰で作られた旧家が有名です。
※湿式工法とは:建築現場で、モルタルやコンクリート、漆喰、土壁、石膏などの塗り壁材を水と混ぜて練り、それを職人が刷毛やコテを使って下地材の上から塗って仕上げていく工法です。
この湿式工法は目地がないので仕上がりが美しいなどのメリットがありますが、職人の高い技術が求められるため品質の差が出やすいことや、クラック(ひび割れや亀裂)が入りやすい、工期が長くなってしまうなどのデメリットがありました。
そこで、1960年代以降サイディングボードと呼ばれるものが開発され、乾式工法が普及していきました。現場でべたべた塗り付ける(湿ったもの)のではなく、板状になったものを(乾いたもの)を組み立てるほうが、作業も簡単で、工期も短く済むようになりました。
※サイディングボードとは:家の外壁を形成するパネル型の外壁材のことです。工場で作られたサイディングボードを外壁に貼り合わせ、その貼り合わせたサイディングボード同士のすき間をゴム状の建材で埋めることで外壁を形成しています。
※乾式工法とは:工場で生産されたパネルや合板などの既成部材を施工現場で取り付ける工法です。
また、工場であらかじめ生産されるので、職人さんの腕による品質ムラもなくなります。
現在でも、質感や風情を感じられる湿式工法で外壁を施工される会社もありますが、多くの会社はこのサイディングを使って外壁を施工しています。
サイディングも細かく分けると、「窯業系」「金属系」「木質系」「樹脂系」などに分類されます。また、ALCと呼ばれる軽量気泡コンクリートなどもあります。
また、タイル外壁はサイディングボードに接着剤で貼り付けていきますので、湿式と乾式の両方の性質を持っています。 それでは、セキスイハイムが採用している外壁について詳しくご紹介していきます。
セキスイハイムの外壁
セキスイハイムの外壁は、オリジナルで作られています。
積水化学工業のグループ会社のひとつであるセキスイボード株式会社が生産しています。
滋賀県と群馬県に工場があり外壁生産専用会社となります。
年間2,200,000㎡・東京ドーム47個分の面積の外壁を1年間で生産しているとのこと!
セキスイハイムオリジナルの外壁は大きく分けて2種類に分けられます。ひとつはタイル外壁、もうひとつは「レリーフウォール外壁」と呼ばれています。
タイル外壁ラインナップ
【厚物タイル】
【通常タイル】
レリーフウォール外壁ラインナップ
【ジオマイト外壁】
【レリーフ外壁】
レリーフウォール外壁は、先ほども述べた「窯業系サイディングボード」に分類されます。
窯業系と聞いて、どういう意味だろうと思った方も多いのではないでしょうか。これは次の外壁の生産工程で理解できます。
セキスイハイムではどのように外壁が作られるのか?
ここでは、レリーフウォール外壁、タイル外壁がどのように作られるのかをさらに深堀りして解説します。
レリーフウォール外壁の生産過程
材料は、独自開発されたオリジナルの熱硬化型のセメントに細目(表層)と粗目(芯層)の2種類のウッドチップを混ぜて作られます。表面は固く、芯側はしなやかで粘りのある外壁にするためです。
複数回に分けて積み上げられ層となった原料を圧縮していきます。約2,000tものプレス機で、元々50mmあった厚みをわずか20mmまで圧縮します。(外壁の種類により40mm→12mmのパターンもあります)こうすることで、ウッドチップが複雑に絡み合い、隙間の無い密な構造ができあがります。
その後、高温高圧のオートクレーブ窯で蒸気養生されます。
常温での養生に比べ、安定した結晶が作られ、耐久性や寸法安定性が向上します。
この「窯」で養生される工程を経て作られるので、「窯業系サイディング」と呼ばれます。また、商品名はレリーフウォール外壁ですが、木の繊維とセメントで作ることから、SFCボード(セキスイファイバーセメントボード)とも呼ばれます。
その後、必要な大きさにカットされ、シーラー塗装(下地塗装)工程へと向かいます。
必要な窓部分を自動でカットされたり、ユニットへ取り付けるための鉄フレームへ固定されたりします。
その次は、エアーとブラシで入念に埃を除去したのちに着色塗装をしていきます。これも工場内の機械で均一に塗装していきます。
さらには、塗料に静電気を帯電させる静電塗装をおこなうことで、高い品質の塗装を実現しています。(飛散が少なく塗料の消費も少なく経済的!)
最後に、紫外線をカットするアクリルシリコンクリア塗装を施し、耐久性を高めます。2回の塗装後はそれぞれ80~100℃の熱風で乾燥させます。
レリーフウォール外壁のメリットとデメリット
【メリット】
- 表面が固く仕上がることにより、衝撃に強く傷つきにくい
- 曲げ歪みに強く、地震や台風の際も粘り強く外力を跳ね返す
- 高密度なため、水を吸いにくく劣化しにくいため安心
- 火にも強く840℃の熱で30分加熱しても、裏側は約80℃
【デメリット】
- 塗装外壁のため、定期的なメンテナンスが必要(約15~20年程)
- アクリルシリコンクリア塗装を施し、耐久性が高いが、塗り直しの時に注意が必要
知らない業者にお願いしてしまうと、クリア塗装部分と相性が悪く剥離の原因に
タイル外壁の生産工程
タイル外壁は先ほどのSFCボードにタイルを貼り付けていきます。
住宅のタイルの施工は、建築現場で貼り付けるのが一般的です。
そのため2つの問題があります。
①作業に時間がかかる為、開封から硬化まで時間の長い接着剤を使わざるを得なく、天候や気温によって差が出でしまう。※接着材は乾燥が重要
②垂直面に固定していかなければならないため、職人さんの腕により品質の差が生じてしまう そのような問題を解消するために、セキスイハイムの接着剤は、混ぜると硬化が始まるオリジナルの接着材を使用します。(グループ会社に接着剤専門のセキスイフーラー株式会社があります)
このような接着剤は、建築現場で採用されることはほとんどありません。
この接着材を、社内資格を持った作業者が垂直ではなく、下向きに塗布していきます。 接着材の厚みも全数チェックします。検査が終わるとすぐに、タイルを貼っていきます。
ロボットによって作られるものと、機械のガイド位置を使い正確に手動で貼り付けられるものとありますが、素早く作業をしていきます。
その後、専用の乾燥炉に運ばれ接着剤を完全に硬化させてできあがりです。
完全に工場内で作られるため、途中で雨に濡れたりすることもなく、明るい照明のもと全数検査をおこない、寸法、汚れ、精度を確かめて出荷されます。
タイル外壁のメリットとデメリット
【メリット】
- 単体で外壁にもなる耐久性の高いSFCボードとの2重構造でさまざまな外壁の中でもトップクラスの耐久性能
- ひび割れ、欠損、剥がれ、浮きの著しいものに関しては引き渡しから30年もの保証がつく(30年保証の外壁は他社ではほとんど見かけません)
- 塗り替えが永久に不要なのでメンテナンスコストがかかりにくく、色褪せず外観は美しさを保てる
- 1300℃もの高温の窯で焼かれた「磁器タイル」は非常に硬くほとんど傷がつかない(磁器タイル>せっき質タイル>陶器タイル>レンガの順で焼く温度が高く、固くなります)
- 磁器タイルは常に薄い水膜があり、雨が降るたびに美しさを取り戻す
【デメリット】
- レリーフウォール外壁より金額は高く、初期費用がかかる
- これはどのような外壁でも同じだが、環境によってはコケが付着する場合がある(こすれば簡単に落ちます)
- 後からエアコンを取り付けるために穴をあけようとすると固くて大変
外壁の取り付け工程にもセキスイハイムならでは特長あり!
このように製造された外壁は、セキスイボードの工場からセキスイハイムの住宅の工場へと運ばれます。
内側から固定されることで雨水の浸入を防ぐ
一般的な外壁は、上棟工事が終わったのちに外側から施工されますが、セキスイハイムでは上棟工事(セキスイハイムでは据付と呼んでいます)前に工場のラインの中で取り付けられます。
大型の機械を使うことで正確に取り付けができることと、ポイントは内側から固定できることです。
外壁とユニットを上から見たものが次の図です。
Aの部分が先ほどの製造工程のところでも少し触れました外壁工場で取り付けられてくる金属枠となります。Bの部分がユニット側の構造体部分(室内側)です。
これをB側からフラワーリベット(デイジーリベット)と呼ばれる特殊な金具で固定します。
原理としては、図内のAの部分を引っ張ることによりBの部分が裂けて広がり固定されるというものです。
ガスケットを使うことでさまざまなメリットが
ガスケットという言葉を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。
「パッキン」というと知っているかたも多いと思いますが、部品と部品との間に挟むシール部材を「ガスケット」や「パッキン」と言います。
パッキンは水筒やお弁当など完全に固定しない部材同士をつなぐもので、ガスケットは固定されて基本的には動かさないものの間に挟む部材をいいます。
どちらとも、隙間を埋めて接合部から水などが出入りしないために使われます。
メリット1:メンテナンスが簡単
通常、外壁と外壁の目地の部分にはコーキングというシリコン樹脂素材等で防水処理をします。こちらが5年から10年もするとひび割れてきて劣化していきます。
外壁部分が大丈夫であっても目地から雨水が侵入すると建物の劣化を早めるため、マメにメンテナンスが必要となります。
メンテナンスも劣化したコーキングを除去し、再度コーキングを打つことになるため、そこそこ手間がかかります。(お金もかかる)
セキスイハイムではすべての目地でガスケットを採用しています。
取りはずしや交換も簡単なうえ、コーキングと比べると劣化しにくい材料を利用しているため、メンテナンスプログラムでも30年での交換が目安とされています。
結果メンテナンスコストがかかりづらいというメリットがあります。
メリット2:地震の時に柔軟に追従
コーキングと違い接着されているわけではないので、地震などの揺れに対しても柔軟に追従します。割れや切れを起こすこともなく外壁同士のクッション材として機能します。
現場施工のタイル外壁の場合は、目地の間もタイルが来るために、地震や地面の揺れによってタイルそのものが破損する例もあります。
しかし、セキスイハイムではタイル外壁の場合、ガスケット目地になるため、割れたり、欠けたり、脱落したりというリスクが少なくなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外壁は建てた後のメンテナンスコストに最も直結する部材のひとつです。建ててから後悔しないように、こちらの記事をご自身の家づくりの参考にしていただければ幸いです。