総務省『平成30年住宅・土地統計調査』によると、静岡県の持ち家率は67.0%で全国25位。もっとも高い秋田県が77.3%、もっとも低いのが沖縄県で44.4%という結果でした。
全国平均で見ると持ち家率は61.2%。
他県と比較してみると賃貸よりも持ち家の比率が全国平均より高いのが静岡県です。
皆さんはこの数字を見てどう思われるでしょうか。
さまざまな人がそれぞれの立場でこの永遠のテーマ『持ち家と賃貸のどっちがよい?』という議題を熱く語っております。
今日は住宅営業経験者として、このテーマについて語りたいと思います。
持ち家と賃貸よくある議論について考える
ここではちまたでよく議論される論点を考えてみます。
我々のような住宅会社と、不動産会社では当然持ち家についてのメリットが語られます。
資産形成や投資などという切り口では賃貸がいいという方と、マンションも含めた持ち家がよいという両方の立場がいます。
結婚し子どもにも恵まれ、夢のマイホームを謳歌している方、残念ながら離婚や自己破産を経験された方では、それぞれ意見も異なってくるはずです。
それぞれの立場のよくある議論について1つずつ考えてみましょう。
「家賃がもったいない」問題と「負動産」問題
当然、アパートの家賃は自分の手元には戻ってきません。
個人で事業をされている方であれば、「経費」として落とせるのでしょうが、普通のサラリーマンにはあまりメリットがありません。
しかし、一軒家を購入し、ローンで返済していけば、最終的には自分の持ち物となり、財産として手元に残ります。
一方で、不動産をもじり「負動産」と表現される方もいるようです。
住宅は、取得した瞬間から価値が下がり、上物(建物)の値段は20年で0になる。土地も、今後の人口減少を考えると価値が下がる可能性が高い。建物3,000万円、土地2,000万円で合計5,000万円支払っても、20年後の価値は2000万円以下になる可能性が高い。
「3000万円もの価値を失うし、すぐに現金化しにくい不動産は持つべきではない!」
といわれる方もいます。
皆さんは、どう思いますか?
高齢になると家が借りられないので賃貸は老後に困る
これも皆さんよく聞くのではないでしょうか。たしかに、大家さんの立場を考えると、高齢者には、病気や死といったリスクがともないます。実際にネット上でも「70歳という年齢を伝えただけで、不動産屋さんから相手にしてもらえなかった」などの声が聞かれます。
しかし、 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の一部を改正する法律が平成29年4月26日公布 10月25日施行され、外国籍の方や、被災者、障害者、高齢者といった住宅を確保しにくい方々への支援制度が整えられました。
実際に静岡県に登録されているセーフティネット住宅は、2023年11月現在、644棟896戸登録されています。まだまだ登録件数が少なく、利便性や快適性などすべての条件が適うわけではないと思いますが、家が借りられないということはなさそうです。
また、賃貸で暮らしながらお金を貯めておき、定年後退職金と合わせて終の棲家を購入するという方法などもありそうです。
皆さんは、どう思いますか?
土地を買えば子どもに財産として残せる!
家を建てるにあたって、土地から探して、購入して、ローンを組むということを考えるとその大変さから、自分の子どもには土地を残してあげたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
たしかに、土地という財産を残してあげられることは、メリットの1つかもしれません。
しかし、現在は人生80年時代。自分たちが30歳の時に子どもを産み、家を建てたとして、その子どもが成人し、結婚して同じように30歳となります。その時、60歳。すんなりと、子どもにその土地を譲り、自分たちは別の場所に改めて居をかまえるのでしょうか。
また、子どもがふたり以上いた場合はどうなるのでしょうか?
分割できるほど大きな土地なのでしょうか。
さらに、静岡県で生まれ育ったとして、子どもたちが、同じ場所での生活を選択する割合はどのくらいでしょうか。
もっというと、子どもの立場として現金と土地どちらが欲しいと言うでしょうか。
当然、相続のことも考えて計画をするべきですが、子どものためというよりは、自分たちがどういった人生を送りたいのかを優先的に考えてみてもよいのではないでしょうか?
皆さんはどう思いますか?
【結論】どちらでもいい(価値観や前提条件によって変わる)
何か答えを期待してこのページを開いていただいた方、申し訳ありません。
それぞれの方が家に何を求めるのか、ロマンなのか、コスパなのか、資産価値なのか、住居よりも優先すべきものがたくさんあるのかないのか。
そして前提条件として、どんな家族構成で今後どのような見通しなのか、地方なのか都会なのか、今の収入はどのくらいなのか、土地があるのか、現金も含めた資産があるのか、ないのかによって答えは変わってきます。
コト消費とモノ消費
商品の所有に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」、商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向を「コト消費」と呼ぶそうです。
理論vs感情といってもいいかもしれません。
家を「モノ消費」として考え、「資産形成」「投資の一部」としての意味合いが強い方は、賃貸にかかる経費と持ち家を買うことによってかかる経費および資産価値がどのように変動していくのかを計算して、最終的にはどちらが経済効率がよいかを比較して決めるのがよいのではないでしょうか。
こういった方は、マンションなども選択肢の1つになるかもしれません。
一方で、「コト消費」を重視し、子どもが自由に元気に遊べる環境を整えてあげたい、自分なりのこだわりでこんなことを家で実現したい、などの気持ちの満足感を優先される方は、持ち家を検討されるのがよいのではないでしょうか。
もちろん、経済効率も大事ですが、資産価値というよりは、自分たちがローンを支払っていける範囲内(メンテナンスコストなども含め)を考えて計画をすれば、何も問題がありません。
【もう少し具体的に考えてみる】静岡県だとどうなの?お金で考える賃貸vs持ち家
とてもざっくりではありますが、前提条件を少し整えてから、考えてみましょう。
▼前提条件 夫婦+子どもふたり 藤枝市 土地や資産なしの場合
賃貸の場合は、生涯で家賃はいくらかかる?
30歳から子どもふたりが独立する55歳までの25年間をファミリー向け賃貸で暮らす
3LDKもしくは、4LDKで築浅物件を賃貸物件検索サイトで探してみたところ、次のような物件がヒットしました。(2023年11月28日に検索)
▼ヒットした賃貸物件
築10年 3LDK 70.64㎡ 賃料13万円 藤枝駅徒歩 37分
▼この期間にかかる家賃(敷金礼金や契約更新料などの諸経費は除く)
13万円×12か月×25年=3,900万円
その後の55歳から80歳までは夫婦ふたり、賃貸物件で暮らす
この場合は以下のような物件がヒットしました。
▼ヒットした賃貸物件
築9年 2LDK 53.75㎡ 賃料8.7万円 藤枝駅徒歩37分
▼この期間にかかる家賃(敷金礼金や契約更新料などの諸経費は除く)
8.7万円×12か月×25年=2,610万円
家賃の総額を合計すると
6,510万円になります。
土地購入+注文住宅の場合は、持ち家の取得と維持にいくらかかる?
30歳でマイホームを建てて、35年ローンで返済する
上記の賃貸とほぼ同じ「土地50坪 3LDK 建物100㎡ 藤枝駅徒歩45分」の条件で持ち家を建てた場合を仮定して考えてみます。
▼持ち家の取得にかかる費用
- 土地 50坪×26.万円=1,300万円 (仲介手数料、諸費用込)
- 建物 100㎡(32.5坪)×80万円=2,600万円
- その他諸費用 800万円(地盤改良費やインテリア費など必要経費すべて)
合計:4,700万円
▼ローン費用や固定資産税も考慮して計算した場合
- 4,700万円を金利0.8%・35年ローン・ボーナスなしで返済
- 月々:128,338円、総返済額:53,902,229円(つまり、約5,400万円の支払い)
- 固定資産税が年間25万円×50年=1,250万円
※ただし、長期優良住宅の場合は、最初の5年間で建物は半額になり、その後は年々建物の評価額は下がることを考えて、固定資産税は約1,000万円として計算
合計:ローン総額5,400万円+固定資産税1,000万円=6,400万円
しかし、持ち家の場合はそれだけで終わりではありません。
賃貸は設備に関してはお金がかかりませんが、当然持ち家の場合は修理やメンテナンスにお金がかかります。 給湯機の故障や、お風呂やトイレも50年使えるわけではありません。
▼建物のメンテナンスや設備入れ替え費用の例
- 20年後より、10年に一回 外壁塗装 150万円×3回 450万円
- 30年後に一度 お風呂、トイレなどの大規模リフォーム 500万円
- その他防蟻処理など100万円
合計:1,050万円
持ち家の購入と維持にかかる費用を合計すると
6,400万円+1,050万円=7,450万円
そこから資産が残る土地代を差し引くと
しかし、土地の相場が変動しなければ、1,300万円相当の資産が残りますので、
7,450万円-1,300万円=6,150万円
となり、持ち家の場合は6,150万円が実質的な住まいのコストとなります。
※その後に土地を「売却する」となると解体費など必要になります
この場合の賃貸と持ち家でかかる費用を比較してみる
賃貸:6,510万円 持ち家:6,150万円となるため、上記の計算でいくと、賃貸より広くて、住環境も優れた持ち家の方が若干コストパフォーマンスは高そうです。
都会であれば3LDKなどの物件も豊富かもしれませんが、住むエリアによってはそもそもファミリー向けの賃貸物件が少なく、選べる選択肢が少ないところもあります。
また、地方では駐車場問題も発生します。
電車でどこまでも行ける都内であれば、車を持たないという選択もあると思いますが、地方だと車なしでは生活が成り立たないケースが多いのではないでしょうか。
静岡県の調査では、世帯当たりの自家用車の保有台数は1.5台とのこと。
そうすると、賃貸の場合2台目を停めておくスペースを借りる必要がでてきます。
駐車料金はまちまちだと思いますが、駐車場代も住まいのコストとして計算に組み入れなければなりません。 このあたりは、ご自身で調べてみるとよいかと思います。
自分にとっての人生の優先順位を考えてみる~気持ちの満足感~
先ほどは、賃貸と持ち家を単純に金銭面で比較してみました。
しかし、「どこかに住めれば、どんな家でもかまわない」という人は少ないのではないでしょうか。
一生のうちでもっとも長く過ごす空間をなるべく、自分にとって快適にしたいと思うのは自然なことですよね。
では、どんな家だったら快適に過ごせるのでしょうか?
住宅営業をしていると、「お客さまになぜ家を建てようと思ったのですか?」という動機を必ずお聞きします。
暮らしの満足にはこれがもっとも大切だからだからです。
実際よく聞くお返事は以下のようなものです。
- 子どもが生まれて手狭になった。
- モノがあふれてしまって、もっと広いところに住みたい。
- 夏は暑くて、冬は寒いので快適な家に住みたい。
- 窓の結露もあるし、服やバックがカビてしまうのをどうにかしたい。
- 周囲の音を気にして子どもたちを自由に遊ばせてあげられないので、一軒家にしたい。
- 自分たちや子どもを災害から守りたい。
- インスタグラムで見た〇〇を実現したい。
- 食洗器やガス衣類乾燥機で家事の負担を少なくしたい。
- 電気代が高いので、電気をなるべく買わずに住むようにしたい。
- 老後を考えて平屋のワンフロアで完結できる生活にしておきたい。
- ビルトインガレージで車を眺めて生活がしたい。
- リモートワークで家にいることが多く、仕事をしやすい環境にしたい。 ・家族の思い出としての家を大事にしたい。
上記に関しては、そういった賃貸を探すこともできるかもしれません
(セキスイハイムの賃貸もありますし、一軒家を賃貸として貸し出している物件もあります)
しかし、都合のよい物件が安く貸し出されているかというと現実には難しく、求めることが多くなれば賃料も上がります。
そして、なかなか希望の物件が見つからない場合の方が多く、これらの要望を叶えるために、マイホーム購入に一歩踏み出すという方が多いのではないかと思います。
ただ、マイホームを持つということは、当然「リスク」もともないます。
最後に安心して購入するために必要なことを考えたいと思います。
持ち家を安心して購入するために考えたほうがよいこと
「ローンの支払い」に関する不安への対処
ローンを組む際の不安要素
- 金利の上昇によって、支払いが増大するおそれ
- 収入の減少によって支払いができなくなるリスク(病気、不景気など)
- 夫婦でペアローンを組んだが、離婚という結末を迎えてしまう
安心してローンを組むためのポイント
ローンを組む際には必ず、団体信用生命保険に入ります。
万が一亡くなってしまった場合は、保険でローンが完済されます。
最近は、これにがん保険が付加され、がんと診断された瞬間にローンが完済されるタイプなどさまざまな商品が販売されています。(その分金利負担が増えます)
また、家を買う機会に、生命保険などを見直す方も多く、万が一のリスクを保険で賄うことができます。
残念ながら「離婚保険」という商品は存在しませんでした。
そこはお互いの努力が必要かもしれません。
いずれにしても、ローンに関しては、実際に住宅ローン破産をする人は0.1%程度だといわれています。
つまり、よほど無理な借り入れをしなければ問題ありません。
さらに、急な減収でローンの返済が厳しくなってしまった、海外に転勤になってしまったといった場合に、JTIという組織が、マイホームを借り上げてくれ、契約中は空室中でも賃料を支払ってくれるという仕組みがあります。(最初に申請が必要です)
これには、どの住宅会社でも可能というわけではなく、条件があります。
セキスイハイムであれば、この「マイホーム借り上げ制度」を利用できます。
「簡単に引っ越しできない」に関する不安への対処
簡単には引っ越しできないリスク
自分の家庭以外の問題で住環境が悪化した場合でも、簡単には引っ越しができません。
- 近所に、嫌な施設ができてしまった。
- 隣におかしな人が引っ越してきてしまった。
「修繕費用やメンテナンスコスト」に関する不安への対処
「修繕費用」が思ったよりもかかるケースとは?
先ほどの試算でメンテナンス費用を約1,000万円としましたが、大地震で家が倒壊したとなれば、1,000万円どころでは済みません。
ほかにもさまざまな災害のリスクがありますし、家も作り方や品質の悪い家となると、もっとメンテナンス費用がかさむ場合もあります。
最悪の場合30年ぐらいで住み続けることに限界を迎えてしまう家もあります。
「修繕費用」の想定外を減らすためにできること
「中途半端な持ち家はやめる」ということです。
「安物買いの銭失い」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
災害に強く、メンテナンス費用が極力かからず、光熱費なども考慮して、最初にかかる建築コストだけでなく、長い目で見たランニングコストも含めて計画することが大切です。
例えば、先ほどの費用比較シミュレーションのなかに組み込んでいた「外壁塗装」でいえば、セキスイハイムの家でタイル外壁の家を選べば、外壁塗装は不要となります。
まとめ
賃貸 | 持ち家 | |
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メリット |
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デメリット |
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コスト・ 資産価値 |
※前述のケースの場合 資産価値は「0」 |
※前述のケースの場合 持ち家は土地に資産価値があり |
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ここまで読んでみて、やっぱり賃貸がいいなと思った方は賃貸に、やっぱり持ち家がいいなと思った方は持ち家を建てていただければいいかと思います。
お金も大切な一方、世の中にはプライスレスなこともたくさんあります。
ぜひ、ご家族でたくさん話し合い、自分たちの優先順位や大切にしたいことを考えてみてください。
皆様の人生がよいものとなりますように!