平屋住宅は、ワンフロアで生活できる手軽さと快適さから、近年ますます注目を集めています。
特に静岡県内では、平屋の建築数が年々増加しており、多くの方がこの住まい方に魅力を感じています。
しかし、平屋には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
本記事では、それらをしっかり理解したうえで、皆さまが最適な住まいを選ぶための情報をご紹介いたします。
平屋住宅が今増えている
全国の状況
国土交通省が発表した2023年の建築着工統計によると、居住専用住宅として建築された平屋は57,848棟で、全体の約15%を占めています。
この数字は年々増加傾向にあり、特に近年はさらにその勢いが強まっています。
平屋は、今や日本全国で注目される住宅スタイルのひとつとなっています。
静岡県の状況
同じ統計調査で静岡県の状況も見てみましょう。
静岡県においても平屋の人気は高く、2018年頃からその建築割合が全国以上のペースで増加しています。特に2011年と比較すると、平屋の建築棟数は倍以上となっており、「静岡県における平屋ブーム」と言っても過言ではありません。
全体の住宅着工数が減少傾向にある中、平屋の人気はさらに高まっていることが分かります。
今、平屋が増えている背景とは?
平屋が増えている背景には、さまざまな理由が考えられます。
例えば、核家族化や一世帯あたりの子どもの人数の減少、シニア世代の増加などです。
また、平屋は生活動線の良さや開放感のある空間、将来の高齢期における安心感といった多くの魅力があり、こうした理由から平屋を選ぶ人が増えていると考えられます。
ここから先では、平屋の魅力・平屋を選ぶメリットについて詳しくご紹介します。
平屋のメリット
①効率的な生活動線がつくりやすい
平屋の大きな魅力の一つは、生活動線の良さです。
ワンフロアで完結する間取りは、家事効率を高め、家族とのコミュニケーションも円滑になります。家事動線がシンプルになり、動き回る時間を大幅に削減できます。
また、階段がないため、重い洗濯物を持って上下移動する必要もありません。将来、足腰が弱くなったり、車いすでの生活を余儀なくされた場合でも、ワンフロアの平屋なら、自宅で快適に暮らし続ける選択肢が可能です。
例えば、以下のような間取りでは、洗濯物を脱ぐ、洗う、干す、仕舞うといった一連の作業が赤枠内で全て完結します。
また、トイレをはじめとしたすべての扉が「引き戸」で設計されており、車いすでの生活でも介護がしやすい造りになっています。
②開放的で伸びやかな室内空間がつくりやすい
平屋の魅力の一つに、開放的で伸びやかな室内空間があります。ワンフロアならではの空間の連続性と一体感を感じる住まいを実現することが可能です。
さらに、屋根の形状を活かした傾斜天井や吹き抜けを採用すれば、縦方向の空間も贅沢に活用できるのが特徴です。(2階建てでも工夫次第で可能ですが。)
③家族の気配を感じやすく、コミュニケーションが深まりやすい
平屋は、すべてがワンフロアで完結するため、家族が自然とつながる空間を作りやすいのが特徴です。
どこにいても家族の気配をなんとなく感じられる住まいを実現できます。 ※ 建築面積を広く確保すれば、プライベートな空間を確保しやすくなり、その分、家族の気配は薄まることがあります。
④ペットとの生活にもおすすめ
平屋メリットまとめ
ここまで、平屋のメリットをご紹介してきました。
平屋の最大の魅力は、階段を使わずにワンフロアで生活できる点です。これにより、家事や移動がスムーズになり、特に高齢者や小さなお子様がいるご家庭にとって大変便利です。
また、家族全員の気配を感じやすく、コミュニケーションも自然と取りやすくなります。
さらに、掃除が楽で、バリアフリーに適しているため、将来的な住まいとしても安心です。
平屋にもデメリットはある?
しかし、何事にもメリットの裏にはデメリットが存在します。
例えば、以下のようなことがよく聞く平屋のデメリットです。
プライバシーの確保が難しい?
これは「家族の気配を身近に感じられる」というメリットの裏返しともいえます。
間取りを作成する際には、注意が必要
2階建て住宅における「リビング階段」のメリット・デメリットでもよく話題になりますが、リビング内に階段を設けることで、子どもが帰宅した際に必ず顔を合わせてから自室に行くという利点があります。これは、家族のつながりを感じ、コミュニケーションを取りやすい例としてよく挙げられます。
しかし、リビングに階段があることで、子どもの友達が遊びに来た際に、必ずリビングを通ってから部屋に行く必要があり、プライバシーが確保しにくくなるというデメリットもあります。
これは平屋の場合でも同様で、玄関からすぐにリビング、さらに奥に子ども部屋があるような間取りでは、リビングを必ず通ることになります。
音の問題も考慮が必要
安易にリビングを中心に主寝室や子ども部屋を配置すると、扉や壁一枚隔てた先がリビングとなり、音が気になることがあるかもしれません。
家族が同じ時間帯に「寝る・起きる」習慣を持っていれば問題は少ないですが、例えば、父親の帰りが遅く、子どもの就寝後に食事やリラックスタイムを楽しみたい場合、音に配慮しながら生活する必要が出てくることもあります。
そのような場合には、廊下や他の部屋を設け、「寝る部屋」と「活動する部屋」を適度に離すといった工夫が必要です。
リビング真横の居室のため、家族の気配は感じやすいが、プライバシーは低めの住まい。
廊下という緩衝地帯を作ることで、プライバシーを確保。その分、距離は感じる住まい。
②建築するための土地広さが必要なので取得コストと維持コストがかかる?
平屋は2階分のスペースを1階に集約するため、どうしても広い建築面積が必要になります。
それに伴い、土地も広く必要となるため、取得コストや維持コストがかかります。
2階建てと比較した場合
たとえば、延床面積30坪の家を建てる場合、2階建ての家であれば、15坪の建築面積に加え、車や庭のスペースが確保できる土地があれば十分です。
しかし、平屋の場合は、少なくとも15坪分の追加スペースが必要になります。
「建蔽率(けんぺいりつ)」に注意
さらに、平屋を建てる際には「建蔽率(けんぺいりつ)」という言葉を知っておくことが重要です。
建蔽率とは、敷地面積に対する建築可能な建築面積(建物を真上から見た面積)の割合を示すものです。
例えば、50坪の土地に建蔽率50%の規定がある場合、建てられる1階の面積は最大で25坪です。もし30坪の平屋をこの土地に建てるなら、60坪以上の土地が必要になります。
この建蔽率は「用途地域」によって異なり、第一種低層住居専用地域などでは建蔽率が30%に設定されている地域もあります。その場合、100坪の土地が必要となります。
賃貸と持ち家の大きな違いの一つに、「固定資産税」がかかる点があります。
固定資産税は「土地」と「建物」の両方に課され、さらに「都市計画区域」内では「都市計画税」も負担しなければなりません。
現在、「小規模住宅用地の特例」という減税制度があり、これは200㎡以下(約60.5坪以下)の住宅用地に住宅が建っている場合、固定資産税の評価額が1/6に、都市計画税の課税標準額が1/3になるというものです。
一方で、200㎡を超える住宅用地(一般住宅用地)の場合、固定資産税の課税評価額は1/3、都市計画税の課税標準額は2/3となります。つまり200㎡を超える土地を取得する際には、固定資産税の負担が増えてしまうことに留意が必要です。
③建築費&メンテナンスコストがかかりやすい?
次にコストの問題を見て一般的に、延床面積30坪の総二階建てと平屋を比較すると、平屋の方が割高になるといわれています。その理由は以下の通りです。
- 屋根の施工面積が倍になる
- 基礎の施工面積が倍になる
- 土地取得費用が増加する
一方で、階段が不要になったり、2階のバルコニーや2階のトイレが不要になることで抑えられる費用もあります。
メンテナンスにかかる費用について
外壁塗装にかかる足場費用
2階建ての家では、外壁塗装や屋根のメンテナンスの際に足場を組む必要があり、この足場の設置費用がかかります。一方、平屋であれば足場を組まずにメンテナンスが可能な場合があり、その分費用が抑えられることがあります。
ただし、屋根の形状や高さによっては脚立では手が届かず、足場を組む必要が出てくるケースもあります。 次のような家であれば、右側の壁は脚立で塗装できそうですが、左側の壁は難しそうですね。
屋根のメンテナンス費用
建築費用と同様に、平屋の屋根面積は2階建てよりも大きくなります。
そのため、屋根のメンテナンス費用も通常の2階建てよりも高くなることが予想されます。屋根の防水シートの交換や屋根材の交換、塗装など、どのメンテナンス作業も面積が大きい分、費用がかさむ可能性が高いです。
したがって、建設段階でメンテナンスコストを抑えられるような施工方法や素材を選ぶことが重要です。
④家が夏暑く、冬寒くなる可能性がある?
住宅の外周で外気と接する部分に注目
先ほどの図をもう一度見ていただくとわかるように、2階建てと平屋では外皮(住宅の外周で外気と接する部分、図の赤い点線部分)の面積が増えます。 これは、外気や日射からの熱の影響を受けやすくなることを意味します。
平屋の場合は断熱性能がより重要になる
したがって、外気の影響は抑えられる断熱性能が高い家づくりをすることが、平屋の場合は特に大切です。性能が低い家では無駄な電気代がかかるなど、エネルギーコストが増加する可能性があります。
⑤防犯面が心配?
1階の面積が広くなる分、犯罪者にとって侵入しやすい窓などの開口部が1階に多くなります。
侵入経路としては、開口部からがほとんどと考えられるため、こうした箇所に隙が生じやすくなるのです。
防犯カメラ・防犯ガラスなどによる対策の徹底を
防犯対策として、防犯カメラやシャッター、防犯合わせペアガラスの採用をおすすめします。
防犯合わせペアガラスとは、侵入者が叩き割ろうとしても、数回の打撃程度では簡単に貫通しない構造を持っているガラスです。また、災害時の飛来物対策としても安心です。
⑥水害時の垂直避難がしにくい?
平屋は、重心が低い分、地震などの揺れには強いですが、2階がないため、垂直避難が難しくなります。
土地選びが重要
土地選びの際には、浸水リスクの少ない地域を選ぶことをおすすめします。
セキスイハイムオーナーの平屋の実例
掛川市 Mさま
家族構成:ご主人・奥様・ご長女
延床面積:106.25㎡(32.1坪)
家づくりのキーパーソンとなったのは奥さまです。
何をするにも時間をかけずに効率よくこなせる、いわば「タイパのいい家」を強く希望されました。
「掃除がラクで老後も安心して暮らせる、純然たる平屋にしたかったんです。そして、家の中で効率よく動けるように、動線の工夫も不可欠でした」と語る奥さまの視線は、今はもちろん、将来へもしっかり向けられています。
「南面の道路側には洗濯物を干したくなかったので、物干し場は建物の西側にしました。洗濯機のある脱衣室と物干し場を最短ルートで行き来できるように、寝室の西側の窓を掃き出しにし、ここから出入りしています。また、脱衣所にはスロップシンクも設けました。今は汚れた作業服や靴などを洗うのに重宝していますが、将来、両親が介護を必要としたときにも活躍してくれるでしょう。」
本事例について詳しくはこちら
平屋を建てる際のポイントは「ライフスタイルに合わせた家づくり」
平屋住宅は、家族構成やライフスタイルに合わせた柔軟な設計が可能です。
例えば、子どもが小さいうちは広々とした共有スペースを活用し、成長に合わせてプライベートな空間を設けることができます。さらに、将来の介護を見据えたバリアフリー設計も、平屋ならではの大きな魅力です。
平屋住宅には、他の住宅スタイルにはない多くの魅力があります。
しかし、ご自身やご家族にとって最適な住まいであるかどうかを判断するためには、メリットとデメリットのバランスを慎重に考慮し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
このガイドが、皆さまの家づくりにおける一助となることを願っています。