家を建てる理由のひとつに、「子育て」があります。
かつては小学校入学までに家を建てたいという人が多かったのですが、最近では晩婚化の影響もあってか、結婚したタイミングで家を建てる人や、子どもができたタイミング、子どもが生まれたタイミングで家づくりを検討される方が増えてきているように感じます。
今回は「子育て」というテーマで住まい方や暮らし方を考えてみたいと思います。
子どもが『ぐんぐん伸びる』住まいの工夫
実は筆者、ハウスメーカーに勤務する前は塾の講師として小学生や中学生に英語を教えておりました。
子どもが伸びる一番のコツは?と問われると、授業が上手下手ということよりも「子どもが自分から主体的に行動すること」です。やらされる勉強・習い事などはあまりうまくいきません。
この学校に受かりたいでも、〇〇君に勝ちたいでも、なんだかこの教科が好きでもモチベーションは何でもよいのですが、自分から動きだせると子どもはぐんぐん育ちます。
住まいや暮らしにもこの仕掛けを作れると良いですね。
まずは生活習慣を整えるために
私たち大人もそうですが、仕事やプライベートでも、何かに真剣に取り組もうと考えたとき、生活が乱れて気力や体力が低下した状態では、最高のパフォーマンスは発揮できません。
しっかりした休養・睡眠、適度な運動、バランスの取れた栄養の摂取が大切なのは言うまでもありません。
睡眠の質を高める住まいの工夫
メジャーリーガーの大谷翔平選手も睡眠時間を大切にしているのは広く知られています。
子どもが気持ち良く朝を迎えるためには、決まった時間に寝られること、熟睡できることが必要です。
そのために、重要なのが次の3点です。
- 室温や部屋の湿度が快適に保たれていること
- 遮音・遮光に配慮されていること
- なるべく東側に部屋を作り太陽の光が浴びられること
睡眠の質には、セロトニンとメラトニンというホルモンが関係しています。
上質な睡眠をもたらすメラトニンは、幸せホルモンと言われるセロトニンを材料として分泌されますが、セロトニンの生成はほぼ午前中のみ。朝の光が必須です。早起きして日光をしっかり浴びて、セロトニンを出すことが重要です。(樺沢紫苑先生研究データより)
安心して遊べる空間を確保する
子どもの生活習慣には社会環境も影響します。
住まいを探す際に、近くに公園などの施設で子どもが安心して遊べる空間を考慮することも大切です。また、外部にそういった環境が確保できない場合は、庭や室内で遊べる空間を作ってあげることも必要です。
「食う、寝る、遊ぶ」という言葉がありますが、「遊び」もとても大切な要素です。
また、庭に自然があると、子どもは日々変わっていく外の様子を、身をもって体感することができます。
変化に気づく感性は、「なぜ?」と好奇心や探求心にもつながります。子どもが自発的に学ぶ環境としても期待できます。
子どもが自らアクティブに過ごせる空間づくりの工夫
収納や片付けの習慣づくり
子どもが学校から帰ってきて、手も洗わずランドセルはリビングのソファーに投げ出され、脱いだ靴下が散乱している状況を想像してみてください。
ついつい「片付けなさい」と声を荒げてしまう。そしてそれが毎日続いてしまう。たまたまそれを見た父親の「そんなガミガミいうなよ」という一言についカッとなってしまう・・・。
ありがちな光景ですね。でも考えてみてください。
例えばランドセルの置く場所はどんなルールになっているでしょうか?2階の子ども部屋が正しいポジションでしょうか?でも実際は、宿題や勉強をする場所がリビングだったりしませんか?
すこし間取りに工夫を加えるだけで、子どもたちの主体的な片づける習慣が生まれます。
例えばこんな間取りだったらどうでしょう?
「ただいま」という言葉とともに玄関を開けた直後に入るのがファミリー玄関。
靴箱を開ける・閉めるという1動作がないだけでもしっかりと靴をしまうことが習慣化しやすくなります。子どもの靴の定位置を決めてあげることも、靴を仕舞う習慣づくりになります。
②コート収納
家族の冬物のコートが仕舞える収納を1階に。
靴を脱いだら、冬のコートなどはここに収納します。
③子どもロッカー
2階の自分の部屋にわざわざ仕舞いにいくのも大変1階の帰宅動線上にランドセル・鞄の定位置を確保。
勉強する場合は逆側の和室からも取り出せて便利!
小さいうちは制服からの着替えもここでOK。
1階のファミリークローゼット内にこういった場所を設けることも、もちろんOKです。
着替えや手に持っていた荷物の片付けがスムーズにできれば、手洗い場へも自然と足が向くようになります。
①から④の過程を経て、リビングに行くという動線にしてしまうことで子どもも負担感なく、毎日の収納習慣が養われます。
大人の都合だけではなく、「子どもが仕舞いやすい・動きやすい」という目線で考えてあげることも大切です。
そして必ず収納には「定位置」がセットです。どこに何を仕舞うかを家族内でルールづくりが必要です。使う場所の近くにそれを入れる収納を考えることも大事です。
みずからアクティブに学ぶ環境
『どこでも本棚&図書スペースにする』こともおすすめです。
ベネッセ教育情報サイト「小学生の読書に関する実態調査・研究」(2018)によると、読書量の多い子どもは学力を上げている一方、読書をしない子どもは偏差値を下げていることがわかっています。
学力は読書で向上する!
自然と本を読む習慣をつけるためにも、上記スペースを推奨します。
個人的には子どもだけでなく大人にとっても読書は大切だと思います。一緒に本を読む習慣ができるといいですね。
今の主流はリビング学習
学研教育総合研究所の2023年10月調査によると、放課後や休日に勉強することが多い場所「自宅のリビング」が75.5%でダントツ、2位「自宅の自室」が26.2%となっています。
男女や学年によって多少差があるものの、多くの子どもがリビングで学習しているようです。
我が家のふたりの子どもも、リビング学習していますがカウンタースペースなどをつくらなかったため、ダイニングテーブルで勉強しています。食事のため中断となると、一旦片付けて消しゴムのカスなどを掃除し、食後にまた勉強道具を広げるという光景が繰り広げられます。
やはり、リビング内にカウンタースペースを設けるなどして、移動や中断しやすい環境があればなと感じます。同じリビング内でも少しでも集中しやすい環境をつくってあげることも大切かもしれません。 また、最近ではなるべくLDKで過ごしてくれるように、子ども部屋は4.5畳ほどで作られることが多いです。子ども部屋が快適すぎると出てこなくなってしまいます…
こんな子ども部屋の発想も
こちらは平屋で建築されたお客様の実例です。
お引き渡し直後に伺うとリビングに隣接して子ども部屋がありました。 ただ、図面を見るとこの場所は主寝室となっており、子ども部屋は他の場所に2つ設けられています。
どういうことだろう?とお話を伺ってみると、「子どもが小さなうちは大きな子ども部屋として使い、子どもが大きくなりそれぞれに独立した子ども部屋が必要になったタイミングで、ご自身たちの主寝室と交換する」という計画を立てられたそうです。
ライフステージによって部屋の役割を変えるというアイデアは参考になりますね。
【親が楽になる】住まいにおける時短の工夫
次は親目線で住まいの工夫を見ていきましょう。
とにかく家事の時間を減らし、家族との時間をつくる
せっかく家を建てるのであれば、家族との時間を充実させたいもの。
家事を「楽しめるものとする」という方向性もありますが、できれば家事の時間は極力減らして、家族と一緒に過ごせる時間をつくりたいものです。
ここでは、特に家事の時間を占める「料理」「洗濯」について考えていきます。
キッチンにこだわってみよう
家族の「食事」のために欠かせないのが、キッチンです。旅行などの外出を除けば、使わない日はないのではと思います。
時短の前に、先ほど書きましたが料理を「楽しめるものとする」工夫のひとつとして、キッチン選びにこだわるというものがあります。自分が惚れて、いいな!と思ったキッチンで料理をすることで日々のモチベーションが違ってくることもあるかもしれません。
キッチンレイアウトの秘訣
キッチン動線を使いやすく、時短を実現する考え方のひとつに「ワークトライアングル」というものがあります。「シンク」「コンロ」「冷蔵庫」という、よく使う3つのものをつなぐ三角形のことをいいます。
「シンク」「コンロ」「冷蔵庫」をつなぐ3辺の合計が「360㎝から600㎝」が理想的な距離だそうです。
あとはこれに加えて、「ゴミ箱の位置がシンクから2歩以内」、「コンロのそばで使う調味料やフライパン、フライ返し、おたまなどはワンアクションで手に取れる場所へ」、「シンク廻りでつかうボウル、ざる、まないた、包丁などはシンクからワンアクションで取れるように」配置することを心がけましょう。キッチンとダイニングテーブルの位置関係も配膳や片付けという観点で重要です。
キッチンのレイアウトに興味がある方は、詳しくは以下の記事をご覧ください。
料理はキッチンでの過ごし方だけでなく「買い物」も大きな負担要素
家族の食事を作るにあたって、「買い物」も大きな要素のひとつです。
特に、スポーツに夢中になる中学生から高校生の食べ盛りの時期は、びっくりするぐらい食材が必要になったりします。
買い物の負担を減らすふたつのポイントをご紹介します。
【買い物の回数を減らす工夫】
スーパーやコンビニが家から目と鼻の先にあるのであれば頻繁に買い物に行くのもよいですが、買い物の回数は、なるべく減らした方が負担は減ります。パントリースペースがあればストックしやすくなります。
この写真ほど大きなパントリーが用意できなくても大丈夫です。
幅80㎝、奥行き16㎝程度あれば、十分にストック場所として機能します。
また、冷蔵庫とは別に冷凍庫を準備しておくことも最近のトレンドです。
冷凍食品の人気も高まっていることもあり、家庭用冷凍庫も様々なタイプが発売されています。上開きタイプの冷凍庫ではなく、最近は冷蔵庫と同じような前開きタイプも発売されています。
コンパクトなサイズやスリムサイズなどもラインナップされていますが、やはり家を作った後に置こうとすると置き場に悩むことになります。住宅計画の際にあらかじめ冷凍庫スペースも設計に入れ込みたいところです。 万が一の災害の際も、ストック食材があると安心ですね。
洗濯動線を考える
料理と並んで、特に負担が大きい家事が「洗濯」です。洗濯とひとことで言っても、
- 洗う
- 干す準備
- 干す
- 取り込む
- 畳む
- 収納する
という6段階の工程があります。
それぞれの作業場所をできるだけ近くすることが理想です。そこで重要になってくるのがウォークインクローゼットです。
1~5の作業が1か所でできる空間。正面左側のドアを開けるとウォークインクローゼットとなっており収納も楽々できます。
ウォークインクローゼットを間取りに盛り込むコツは、以下の記事を御覧ください。
住宅のプロがおすすめ!子育て世代が喜ぶ家電や設備
次に子育て世代におすすめのとっておきの設備や家電を紹介していきます。
家電編
【食洗器】
オーナー様から「付けて良かった」と聞く、第一位と言っても過言ではないかもしれません。
浅型、深型、フロントオープンタイプなど、さまざまな種類があります。家族の多さや、フライパンなど大型の物を洗いたいかなど、よく検討した上で選びましょう。
当社の共働きの社員もキッチンの一番のお気に入りは食洗器と答えていました。
【自動掃除機】
最近は、さまざまな家電メーカーが自動掃除機を販売しています。
自動掃除機を使いたい方が考慮すべきポイントは、置き場所を考えておくことと、段差をなるべく無くすこと、普段から床などに物を置かない習慣をつけることの3つです。
当社の社員も「安易に収納スペースに設置したが、自動で掃除してもらうのには、収納の扉を開けっぱなしにしておけばならなくなってしまい失敗した」と語ってくれました。
【乾太くん】
乾太くんとは一言でいうと、ガス衣類乾燥機です。※乾太くんは東京ガスの登録商標です。
オール電化ではなく、ガス設備が必要にはなりますが、乾太君も人気の設備のひとつです。
導入したご家庭では「タオルもフカフカに仕上がる」と好評です。
洗濯機によっては、乾燥モードがついていたり、また電気式の乾燥機もあったりしますが、ガスのエネルギーを使って高温で乾燥させる乾太くんは、シワになりにくく、タオルなどの毛も立上りやすいです。何より乾燥時間が短くてすむことがメリットです。
設備編
【スロップシンク】
スロップ(slop)とは、汚水をさします。シンクは流しです。つまり、スロップシンクとは、主に掃除用の大型の流しのことをいいます。
汚水を流すための設備なので、墨汁や絵の具で汚れた体操着をつけ置き洗いしたり、上履きなどの靴を洗ったりするのに便利です。
洗面所で靴などを洗うのに抵抗があるためお風呂場で洗っているという方もいるかもしれません。しゃがんで作業をしなければならないなど使い勝手はイマイチになりがちです。
スロップシンクがあれば汚れものも抵抗なく洗えますし、作業もしやすいというメリットがあります。ペットがいる家庭では、ペットのシャンプーや、お散歩から帰ったペットの足を洗うのにも重宝できます。
【玄関ドア リモコンキー】
買い物袋を抱えての帰宅、お子様を抱えての帰宅など、いちいちポケットから鍵を取り出してガチャガチャ鍵を回すのが大変な場面がありますよね。
そんな時は玄関ドアがリモコンで開けられると手間が省けます。まさにこの写真の状況の時にあると嬉しい設備です。
【全館空調】
夏は涼しく、冬は暖かく、快適に過ごせる住まいの工夫があると、子どもたちものびのび、思う存分遊ぶことができます。また冬場の洗面所は寒くて行くのがおっくうになりがち。
子どもが、「お風呂に入りたくない」「はみがきをしたくない」とぐずることも少なくありません。洗面所を暖かくすることで、子どものお風呂やはみがきタイムもスムーズに。
親の立場で考えると、ワンオペで子どもをお風呂に入れる際は、自分は濡れたまま子どもを着替えさせないといけません。そのようなときも寒い思いをせずに、快適に拭き上げができます。
【空気清浄機能】
静岡県は全国でも花粉の飛散量が多く、3人に1人が花粉症だといわれています。
また、近年は子どものアレルギーも増加傾向にあります。
「鼻水」「くしゃみ」「鼻づまり」「目のかゆみ」「皮膚のかゆみ」「ぜんそく」などは、集中力の低下や睡眠不足をもたらしてしまいます。
勉強、仕事、家事の時間を充実させるためにも、少しでもアレルゲン物質などの汚れた空気を清浄化して室内に取り込みたいものです。
【伝言ボード】
アナログ的ですが大きな伝言ボードは家族の絆になります。
冷蔵庫の面で間に合わせるのではなく、共通の場所に作るのがベター。
家族間のコミュニケーションを促す一工夫となります。また、保育園・幼稚園・学校・塾などの習い事からもらってくるプリント類はかなりの量になります。
大きめの伝言ボードでうまく掲示できるといいですね。
我が家は、伝言ボードがなかったため、ダイニングテーブルの一角にずっとプリントが積まれる…という事態になりました。皆さんはうまく回避してください。
「子どもが成長する間取り」よりももっと大切なこと
ここまで記事をご覧いただきありがとうございます。この記事をご覧いただいている方は、子育て中か、これから子どもを育てていきたいと考えている方が多いかと思います。
また、子どもがよりよく育って欲しいと願われてこの記事を読んでいただいていることと思います。自分の子どもの成長には、いろいろ期待したくなりますね。
しかし、一番大切なものは何かと問われると多くの方は「子どもの命や健康」が真っ先にくるのではないでしょうか。
家族の命を守る家にするには
勉強ができる、スポーツができるに越したことはないですが、多少勉強ができなくてもスポーツが苦手でも「生きていてくれる」ことが何より優先されるはずです。
災害大国日本で、私たちは地震や台風、集中豪雨など増えつづける自然の脅威にさらされています。
いつ誰が被害に合ってもおかしくない状況です。まずは、災害時でも家族の命が守れる家を建てることが最優先です。
家族の命を守る家にするための秘訣は、以下の記事をご覧ください。
家族の健康を守る家にするには
次に健康です。子どもの健康もそうですが、これから長く暮らしていくなかで、皆さんも年をとり、ご自身の健康とも向き合っていけなければなりません。
夏涼しく、冬暖かい、家全体が快適な暮らしができればヒートショックや熱射病などから身を守ることができます。
家族の健康を守る家にするための秘訣は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事のすべてをとりいれることは難しいかもしれませんが、優先順位をつけ家族で話し合いながら、素敵な子育てしやすい子どもも喜ぶ家づくりを目指してみてください。
これ以外にもさまざまなアイデアがあります。住宅アドバイザーがご提案いたしますので、セキスイハイムへのご相談もお待ちしております。