1日の中で何度も立ち、毎日使うキッチンだからこそしっかりとこだわりたいですよね?
最近ではSNSの流行もあり、おしゃれなデザインや優れた設備のキッチンを家にいながら簡単に見ることができるようになりました。
それに伴い、キッチンのこだわりで見た目を重視される方も増えてきています。
また一方で、共働き世帯も年々増加傾向にあり、時短や家事効率アップについても非常に注目を集めています。
こちらの記事では、間取りや実例を交えながらキッチンレイアウトのパターンやポイントについて解説していきます。
キッチンレイアウトの秘訣は「移動距離」と「高さ」
キッチンに求められることは、いかに移動を少なく、効率的に料理を行うことができるか?になります。
そのために重要なのは「ワークトライアングル」を意識した移動動線と、キッチン本体の「高さ」の2点です。
「ワークトライアングル」とはシンク・コンロ・冷蔵庫をつなぐ三角形のこと
ワークトライアングルとは、シンク・コンロ・冷蔵庫の3つを線で結んだ時にできる三角形を指します。
この三辺の距離が長くなりすぎてしまうと家事の効率が落ちてしまします。
かといって距離を短くするために、Aの幅を狭くしたり、Bの間の作業スペースを減らしすぎるのも使いやすいキッチンとは言えません。
ワークトライアングルの目安ってどのくらい?
長すぎても短すぎてもいけないワークトライアングル…
理想的な距離の目安としては
『三辺の合計(A+B+C)が360-600cm程度』
と言われています。
また三角形のかたちが正三角形に近いほどバランスの取れたワークトライアングルとなり、この動線の中に調理器具や食器などの収納場所やゴミ箱などが備わっていると、より理想的です。
実際にワークトライアングルを意識した間取りで建築されたのが次の写真です。
こちらのキッチンの場合、
A:100cm
B:150cm
C:185cm
と合計が435cmとなります。
使いやすいと言われる距離で設計されてますね。
“生活スタイル”によって理想の距離も異なる
使いやすいと言われる距離の目安についてお伝えしましたが、こちらの理想は住まわれる方の生活スタイルによっても異なります。
基本キッチンに立つのが1人ということであれば、キッチンの通路幅は「90cm程度」でも問題ありません。
しかし、家族と一緒に料理を楽しむ場合には人のすれ違いを考慮し、「110-120cm程度」あると理想的と言えます。
キッチンの「高さ」にも気を付けよう
キッチンの高さの目安って?どのくらいが使いやすいの?
使いやすいキッチンにするためには移動距離だけでなく、キッチン本体の高さも考慮しましょう。
一般的に使いやすいと言われている高さは、
「身長÷2+5cm」
と言われています。
もしキッチン高さが身長に対して低すぎてしまうと大きく腰を曲げて作業する必要があるため、腰への負担が大きくなります。
逆に高すぎてしまうと突っ張った作業になることで肩や腕への負担が大きくなってしまい、同様に快適とは言えません。
ただし、この高さについて数字上の理想を取り入れればベストかというとそうではありません。
なぜなら使いやすい高さには個人差があるからです。
システムキッチンの商品を決める前に、ショールームやモデルハウスで体感しよう
使いやすいキッチンの高さには個人差があります。
そのため、選ぶ前にキッチンショールームやモデルハウス等で体感することが失敗しないコツです。
実際の調理工程を意識し、切る・洗う・炒めるなどの一連の動作を試してみて、1番作業のしやすい高さを取り入れましょう。
その際に室内で履くスリッパと同程度の高さの履物を履いていくなどできる限り日常生活に近い形でシミュレーションするように心掛けましょう。
【ここに注意!】キッチンレイアウトでよくある失敗3選
理想的なキッチンを作るためには、その反面注意点や失敗してしまった事例を知ることも重要です。
よくある失敗例としてどのような注意点があるのか見ていきましょう。
3つ抜粋して紹介します。
失敗1:冷蔵庫の位置で失敗
冷蔵庫の奥行きと収納の奥行きは違う!
先ほどキッチンと背面収納との幅が1人作業で約90cm、2人作業なら約110-120cmが目安とお伝えしました。
しかし、冷蔵庫の大きさを考慮して間取りを考えないと失敗する恐れがあります。
なぜなら一般的な食器棚の奥行きが45cm程度に対し、冷蔵庫の奥行きは60-70cm程度と奥行きが異なるからです。
そのため、同じ面に冷蔵庫を並べると冷蔵庫部分だけ出っ張ってしまい、そのスペースだけ狭くなってしまう恐れがあります。
対策としては次の図のように横向きに冷蔵を配置する位置の工夫をする方法、冷蔵庫裏の壁だけ少し掘りこむことで食器棚と面を合わせ、キッチン幅を確保する方法などが考えられます。
置き場所でイライラ!?冷蔵庫をキッチンの奥にするか、手前にするか問題
冷蔵庫の位置を語る上でもう1つ注意が必要なのが、
「冷蔵庫をキッチンの奥にするか?手前に持ってくるか?」
です。
それぞれのパターンにメリット・デメリットがあるため詳しく解説します。
メリット
- コンロの近くになるため、食材など取り出しやすく、調理の効率があがる
- 冷蔵庫の前を人が通過しないため、キッチン背面収納との幅を狭くできる
- 生活感を隠すことができる
デメリット
- 冷蔵庫までの動線が長くなるため、食材や飲み物などの出し入れに手間がかかる
- 家族が飲み物などを取りに来た際に調理している人の後ろを通る必要があるため、スペースが確保できていないと邪魔になりやすくストレスにつながりやすい
メリット
- 動線が短くできるため、買い物してきた食材がしまいやすい
- 家族がダイニング・リビングから冷蔵庫内の物を取り出しやすく、調理の邪魔になりにくい
デメリット
- コンロとの距離ができるため、食材などを取りに行く際の移動が長くなる
- 冷蔵庫が手前にくるため、幅を意識しないとキッチン入り口が狭くなってしまう
- 冷蔵庫がダイニング・リビングから見えやすいため、生活感が出てしまう
冷蔵庫の扉の開き方にも注意しよう!
冷蔵庫の配置で注意したいのがもう1つ。「扉の開く向き」です。
扉の開き方によっては回りこんで利用しないといけないため、これが毎日となると不便を感じてしまう恐れがあります。
新築時に新規購入の場合は間取りに合わせて冷蔵庫を選べばいいですが、すでにお持ちの冷蔵庫を配置する場合は間取り設計の段階から念頭に置いておく必要があります。
失敗2:常にプレッシャー!?オープンキッチンの盲点
2つ目の注意点は、キッチンがLDKの入り口やリビングから丸見えになってしまう配置です。
オープンキッチンと言えば開放的で聞こえはいいのですが、オープンすぎる位置に設定してしまうと、常に人目にさらされてしまいます。
家族からの目線もそうですが、来客の多い家の場合はさらに注意が必要です。
常に整理整頓のプレッシャーを感じてしまうことになりストレスになりかねません。
失敗3:家事動線を意識しすぎての、過剰すぎる効率化は逆効果
家事の効率化を語る上で重要なのが「家事動線」です。
家事は毎日の生活に必要不可欠であり、共働き世帯の増加に合わせてその重要性が高まっています。
もちろん家事動線に配慮すること自体は重要なのですが、それを優先するばかりにそれ以外がないがしろになってしまってはいけません。
例えば回遊性を高めるキッチンにした場合、ドアが多くなり、その分収納や家具の配置に使えるスペースが少なくなります。
また作業している後ろを家族が通過することで調理の邪魔になってしまうケースも考えられます。
家事動線ばかりにとらわれず、他のスペースとのバランスを考慮して配置ことをオススメします。
+α:キッチンまわりのレイアウトで考慮しておくべきその他の注意点
前述したもの以外にも注意しておかないと失敗する恐れのあるキッチンまわりのレイアウトをいくつか簡単に紹介します。
収納の大きさは大きければ大きいほどよいというわけではない
収納は大きければ大きいほどいいというわけではありません。
パントリーなどのストック収納の場合は奥行きが深すぎることで奥にしまったものが見づらく、知らない間に期限が切れていたなんてこともあります。
適材適所の奥行きを考えて配置することが重要です。
ゴミ箱の配置はシンク近くに
調理をすれば必ずゴミが出ます。生ゴミであれば水分を含んでいることも多く、ゴミ箱をシンクの近くに設置出来ないと不便を感じる恐れがあります。
照明の種類だけでなく、明るさや照明の色味を意識する
照明の位置や種類によっては手元が暗くなってしまい、調理がしくにくくなってしまうことも考えられます。また、照明の色味によっては食材の自然な色が分かりにくくなることもあるので注意しましょう。
食材の色を正確に捉えやすい昼白色がオススメです。
コンセントの配置
最近は時短ブームの影響で様々な便利家電が増えており、その結果コンセントの重要性も高まっています。
キッチン収納側のコンセントだけでなく、手元で使う家電用にキッチンカウンター側にもコンセントを配置しておくと便利です。
オープンキッチンなど一部キッチンでは手元側にコンセントを設置しにくいキッチンもありますので事前にご確認ください。
【タイプ別実例解説】キッチンレイアウトのメリット・デメリット
ここまでにキッチンレイアウトをする上での基本的な考え方や注意点を説明してきました。
最後に、キッチンスタイルの種類やレイアウトについて実例を交えながら具体的に解説していきます。
間取りを決める上でも特に興味深いことですよね。
自分たちにとって最適なキッチンがどれか、それぞれの特徴をつかみましょう!
キッチンスタイルは大きく分けて2つ『対面型』or『壁付型』の2種類
キッチンレイアウトは「アイランド型」「ペニンシュラ型」など大きく分けて6種類ありますが、対面型がよいのか、壁付型がよいのかによって選択肢が変わります。まずはこの2つのキッチンスタイルのどちらがご自身の希望にあっているかを考えてみましょう。
対面型キッチン
リビングやダイニングなどの人のいる空間に向かって作業を行うキッチンのことを「対面型キッチン(対面キッチン)」と呼びます。
対面型キッチン1番のメリットは、キッチンの正面がダイニング・リビングとなるため、家族とコミュニケーションをとりながら調理を楽しむことができる点です。
逆にデメリットは正面に壁がないため、においや煙・油汚れなどが他の空間に広がりやすい点が挙げられます。
〇 家族とコミュニケーションが取りやすい
〇小さなお子様がいても動きを見守りやすい
〇テレビを見ながらの作業も可能
〇開放的な印象を与える
×においや油汚れなどが他の空間に広がりやすい
×来客時等キッチンが視線にさらされやすい
△ダイニングやリビングの空間を圧迫する可能性がある
対面型キッチンはさらに、ダイニング側と一切間仕切りを設けないオープンタイプと一部壁や収納によって間を仕切るセミオープンタイプに分けられます。
オープンタイプは一切間仕切りを設けないため、開放感抜群で見映えもしますが、その分整理整頓されていないと汚く映ってしまいます。
セミオープンタイプは家族とコミュニケーションを取るメリットを残しつつ、手元や汚れている部分を隠せますが、キッチン自体のデザインも隠れてしまいがちです。
壁付型キッチン
壁付型キッチンとは、キッチン正面が壁になっているキッチンを指します。
壁付型キッチンのメリットは、においや煙・油汚れが他の空間に広がりにくい点、またリビングやダイニングからの視線がないため、調理に集中しやすい点があります。
デメリットとしては、家族とのコミュニケーションが取りにくくなる点が挙げられます。
〇においや汚れが他の空間に広がりにくい
〇調理に集中しやすい
〇正面の壁に収納が設置できるため便利
〇リビングやダイニングを圧迫しない
×家族とコミュニケーションが取りにくい
×小さなお子様など家族の動きが目に入りにくい
△リビング側からキッチンの中が全て丸見えになってしまう
壁付型キッチンには、キッチンを完全に独立して設置するクローズドキッチンもあります。
リビングやダイニングと空間が別になるため、調理中の過程が見られにくくなり、集中しやすい点が特徴です。
また、音・におい・汚れもより漏れにくくなるため、家族にとってもゆっくりテレビを見やすいなどのメリットがあります。
ただし、調理者が孤立してしまうため、その点は考慮が必要です。
キッチンレイアウトは6種類!自分好みのレイアウトを見つけよう
キッチンのスタイルは大きく分けて対面型と壁付型があることを説明しましたが、それをさらに詳しく見ていくと6種類のキッチンレイアウト(かたちや配置)が存在します。
モデルハウスの間取りと実例写真を使って特徴をご紹介します。
Ⅰ型キッチン(対面型〇 壁付型〇)
シンク・調理スペース・コンロが横一直線に配置されたキッチンを「Ⅰ型キッチン」と呼びます。
壁付型と対面型両方で採用可能ですが、一般的にⅠ型というと壁付型のキッチンを指すことが多いです。
メリット
- 基本横移動のみとなるためキッチン内での動線がシンプルで動きやすい
- アイランドキッチンやⅡ型キッチンと比べ省スペースで設置が可能
- 他のキッチンに比べ比較的リーズナブルに採用できる
デメリット
- 家族とのコミュニケーションが取りにくい
- 壁付Ⅰ型キッチンの場合、コンロ・シンクの横に冷蔵庫やキッチン収納が来ることが多いため、動線が長くなりやすい
- 壁付Ⅰ型キッチンの場合、リビング側からキッチンの中が丸見えになってしまう
ペニンシュラ型キッチン(対面型〇 壁付型×)
Ⅰ型キッチンと似ていますが、対面型キッチンでカウンターの左右どちらかが壁面に接しているキッチンのことを「ペニンシュラ型キッチン」と呼びます。
ペニンシュラとは、英語で半島を意味し、キッチンが壁から突き出ている姿が半島のように見えることから名づけられました。
必要スペースの観点や対面型であることから採用率が多いキッチンの1つです。
メリット
- 壁付Ⅰ型キッチンと比べ開放感がある
- 家族とのコミュニケーションを取りやすい
- 両サイドに通路スペースが必要なアイランド型に比べ、設置自由度が高い
デメリット
- 開放的になる分、においや煙・油汚れが他の空間に広がりやすい
- アイランドやⅡ型キッチンに比べると回遊性は低い
Ⅱ型(セパレート型)キッチン(対面型〇 壁付型〇)
シンクとコンロが分離して向かい合っているキッチンを「Ⅱ型(セパレート型)キッチン」と呼びます。
対面型と壁付型のメリットを合わせ持っており、特徴的なのはその広い作業スペースです。
複数人で一緒に料理を楽しむ家庭、お菓子作りが趣味などの場合、Ⅱ型(セパレート)キッチンがオススメです。
メリット
- シンクがリビング側、コンロが壁側になるため、家族とのコミュニケーションを取りつつも汚れやにおいは抑えられる
- 作業スペースが広くなるため、複数人での調理がしやすい
- 向きを変えるだけで作業が可能なため、動線が短くなる
デメリット
- 他タイプと比べ、設置に広いスペースを必要とする
- 振り返り作業となるため、水滴や汚れが床に落ちやすい
アイランドキッチン(対面型〇 壁付型×)
シンク・コンロのあるキッチンカウンターが前後左右とも壁から独立し、島のように配置されているキッチンのことを「アイランドキッチン」と呼びます。 特徴としては島のように独立していることで、そのまわりを回ることができる回遊性の高さが魅力です。
メリット
- 前後左右が壁から離れているため、開放感が高い
- 回遊性が確保され、他の空間との動線計画が立てやすい
- 対面式になっているため、家族とコミュニケーションが取りやすい
- 前後左右とも壁に面していないため、キッチン自体のデザインが際立つ
デメリット
- 前後左右を壁から離す必要があるため、その分スペースが必要となる
- 全て丸見えになってしまうため、常に整理整頓が必要
- キッチン本体が全面化粧パネルとなるため、他と比べコストが高くなりやすい
L型キッチン(対面型〇 壁付型〇)
その名の通り、シンク・コンロをL字型に配置したキッチンを「L型キッチン(L字型キッチン)」と呼びます。
対面型・壁付型の両タイプで採用可能なキッチンですが、コンロの前だけ壁を設置するセミオープンタイプのとして配置されることの多いキッチンです。
メリット
- Ⅰ型キッチンやペニンシュラ型キッチンに比べ、作業スペースが広い
- ワークトライアングルが作りやすく、動線を短くしやすい
- コミュニケーションの取りやすさと汚れ・におい対策の両立が可能
デメリット
- コーナー部分(入隅部分)の収納がデッドスペースとなりやすい(最近ではコーナー専用の収納もあり)
- キッチンスペースが広くなってしまい、他の空間を圧迫しやすい
- 他と比べコストが高め
U型(コの字型)キッチン(対面型〇 壁付型〇)
シンク・作業スペース・コンロがU型(コの字型)に配置されたキッチンを「U型(コの字型)キッチン」と呼びます。
壁付型・対面型どちらにも採用可能かつ、壁付面の位置によってセミオープンタイプの要素もあるキッチンがU型(コの字型)キッチンです。
作業スペースが広いのも特徴ですが、Ⅱ型キッチンのように複数人で使うというよりも1人で効率的に使う家庭に向いたレイアウトです。
メリット
- L型以上に広い作業スペースの確保が可能
- ワークトライアングルが作りやすく、動線を短くしやすい
- L型同様にコミュニケーションを取りつつ、汚れやにおいの対策も可能
デメリット
- コーナー部分(入隅部分)が2カ所になり、収納部分がデッドスペースとなりやすい
- 配置するにあたり、最も広いスペースが必要
- シンクとコンロの位置によっては水滴や汚れが床に落ちやすい
まとめ
いかがでしたでしょうか?
キッチンレイアウトには様々な種類があるため、それぞれの生活スタイルによって選ぶべきキッチンレイアウトは異なります。
自分たち家族にとって「何を優先すべきか?」を話し合った上でレイアウトを決定しましょう。
とはいえ初めての家づくり、理想のキッチンを見つけるのは簡単ではありません。
理想のキッチンを見つけるためにモデルハウス見学やプロに相談してみるのもいいのではないでしょうか?